ドイツ新時代の象徴「ラップトップ監督」 世界的名将でも意外と高い“無名選手率”

世界で台頭する、プロ選手としてトップレベルの経験を持たない若き指導者たち

 ユリアン・ナーゲルスマンが、ホッフェンハイムの監督に就任したのは28歳の時だった。縦横18メートルの巨大スクリーンを練習場のピッチ脇に置いてホワイトボードの代わりに使い、認知力を高めるための大がかりな装置(へリックス)を導入するなど、斬新な指導法で話題になった。同世代のドメニコ・テデスコ(シャルケ)ら、30歳台のブンデスリーガ監督たちは「ラップトップ監督」と揶揄されもしたが、ドイツの新しい流れを作りつつある。

 若くして指導者を志した監督たちに共通するのは、プロ選手としてトップレベルの経験がないことだ。アリゴ・サッキ(元ACミランほか)やジョゼ・モウリーニョ(マンチェスター・ユナイテッド)がその代表格と言えるが、アンドレ・ビラス=ボアス(元チェルシーほか)やレオナルド・ジャルディム(モナコ)も選手経験がない。

 ブラジルでは名選手が監督に就任するケースもあるが、体育大学を卒業してフィジカルコーチとなり後に監督になった人が多い。1994年アメリカ・ワールドカップ(W杯)でブラジル代表が優勝した時のカルロス・アルベルト・パレイラ監督がそうで、歴代のセレソンにフィジコ系の監督は珍しくない。Jリーグで指揮を執ったオズワルド・オリヴェイラ(元鹿島アントラーズ)、ジョアン・カルロス(元鹿島ほか)もフィジコから監督になった。

 ポルトガルとブラジルにプロ選手経験のない監督が多いのは、国情とも関係しているのだろう。かつては大卒のプロサッカー選手はほとんどいなかったし、新聞を読めない、自分の名前さえ正確に書けない選手すらいた。プレーヤーとしては素晴らしくても、監督は務まらないようなタイプが多かったのだ。大学で理論を学んだ指導者が重宝されたのは、そうした事情があったわけだ。

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