J3全クラブ戦力分析 想像以上に厳しい現状「草刈り場」…唯一例外となったのは?

J3全クラブを戦力分析【写真:徳原隆元】
J3全クラブを戦力分析【写真:徳原隆元】

JFLから昇格した滋賀は既存戦力が残留

 Jクラブのトップチーム人件費はどの程度か。J1クラブは平均で約21億円。これがJ2クラブになると約7億円と激減する。J3クラブはさらに苦しい。1チームあたり約3億円なのだ(数値は2024年度)。

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 これはクラブにとっても選手にとっても、J3リーグが「登竜門」であることを意味している。クラブも売上高平均約9億円という規模の中で、まずは経済基盤を固め、あわよくば上のカテゴリーを狙っていく。上位のカテゴリーではチャンスを与えられなかった選手が、プレーの機会を求めて精一杯アピールし、大舞台を目指す場所でもある。

 野心溢れる選手たちが活躍してくれれば、クラブは勝利を重ねて上位に進出し、すぐさまJ2リーグ入り——とはならないのが現実だ。目立った活躍をすれば選手はすぐに引き抜かれ、代わりの選手を獲得しようにも資金が足りないからだ。

 そんなJ3チームの今季の戦力がどうなっているか、1月14日18:03時点の移籍情報を基に、各チームの戦力をデータで分析した。基準はこれまで同様、放出選手の昨季実績(出場時間・得点)を、獲得選手がどれだけ補えるかだ。そこにカテゴリー差を考慮した係数を用いて評価している。

 すると、そこには想像以上に厳しいJ3クラブの現状が見えてきた。今回のデータで最も衝撃的だったのは、「得点力収支がプラスになったチームがほぼ存在しない」という点だ。 昨季の上位チームや得点源を持っていたチームほど、いわゆる「草刈り場」となっている。

 例えば、奈良は富樫佑太ら即戦力を獲得し17得点分を補填したが、流出した得点力は32点分に上る。鹿児島も同様で、32得点分の流出に対し、補強は12得点分にとどまった。

 J2からの降格組も苦境が浮き彫りになっている。熊本、山口、愛媛はいずれも戦力が大幅なマイナスに。J2復帰には、抜けた主力の穴を、データには表れない新卒選手や新外国人選手がいかに埋めるかが鍵となる。

 そんな中で唯一の例外とも言えるのが、JFLから昇格した滋賀だ。主力の流出をゼロに抑え、既存戦力をベースに戦える点は、組織の成熟度において大きなアドバンテージとなるだろう。入れ替え戦で見せた戦いぶりは、初昇格ながら侮れないことを如実に物語っている。

 ではそんなJ3リーグの中で、比較的「得点力の低下」が少なかったクラブはどこか。

1位 長野
2位 滋賀
3位 琉球

 そして流出してしまった選手の「経験値」を、少しでも補えたクラブはどこになるか。

1位 滋賀
2位 金沢
3位 群馬
4位 琉球

 これらを踏まえた総合評価は以下の通りだ。ほぼすべてのチームが「C評価」となる異例の事態だが、これこそがJ3の現状を示していると言える。

チーム(去年の順位) 評価 コメント

福島(10位)B 森晃太ら得点源流出で攻撃陣再編へ。岡田優希の得点力に依存か。それでもチョン・ソンリョンは別格
栃木SC(7位)C 大森博ら退団で守備再編が急務。鈴木俊也獲得で計算は立つものの、上位進出にはさらなる上積みが必要
群馬(14位)C 高橋勇利也ら流出で戦力低下。神垣陸獲得など中盤は整備したが、決定力不足の解消は不透明なまま開幕へ
相模原(12位)C バウマン流出の穴は大きい。棚橋尭士らアタッカー陣の奮起なしには、得点力不足に泣かされかねない
松本(15位)C 守護神大内一生の流出が痛手。白井達也獲得で穴埋めを図るも、今後昇格争いに絡むには攻撃陣の成長が不可欠
長野(19位)A 松原颯汰の穴を附木雄也ら即戦力で埋め、守備の再構築に着手。堅実な補強で下位低迷からの脱出を図る
金沢(6位)C 西谷和希ら攻撃の核が流出。白輪地敬大ら新戦力にかかる期待が大きいが、未知数な面も多く予断を許さない
岐阜(13位)C 野澤陸ら守備の要が流出。中村駿という司令塔を得たが、守備強度の低下を攻撃力でカバーできるか
滋賀(JFL2位)B 主力流出なく渡邉綾平ら獲得で純粋な戦力上積みに成功。継続性を武器にJ3初年度から旋風を巻き起こすか
FC大阪(3位)C 昨季躍進の立役者山本透衣らが流出。東家聡樹ら新戦力のフィット次第だが、現時点では戦力維持が精一杯の可能性も
奈良(9位)C 神垣陸ら主力が引き抜かれるも、富樫佑太ら技術のある選手を確保。スタイルを継続しつつ新陳代謝を図る
鳥取(11位)C 高麗稜太ら主力流出に対し補強は苦戦。高柳郁弥ら中盤の構成力でカバーし、組織力で勝負するシーズンに
山口(J2・19位)C 岡庭愁人ら攻守の要が抜け戦力ダウンは否めず。飯田雅浩ら実力者を加えたが、チームの再構築には時間を要するか
讃岐(17位)C 附木雄也ら流出でベースダウンの懸念。禹相皓ら経験豊富な選手の加入でチームを安定させ、下位低迷を回避したい
愛媛(J2・20位)C 深澤佑太ら主力が抜け苦しい台所事情。杉山耕二獲得などで立て直しを図るが、選手層の薄さが懸念材料
高知(18位)C 鈴木俊也ら主力が抜け苦しいオフ。濱託巳ら新加入選手が早急にフィットしなければ、序盤から苦戦を強いられそう
北九州 (8位)C 山脇樺織ら若手の流出が痛い。平松昇ら計算できる選手を補強し、堅守速攻の精度を高めて上位を窺うはず
熊本(J2・18位)C 袴田裕太郎ら主力の大量流出でチームは解体状態。永井颯太ら若手の抜擢と成長が、2027年のJ2復帰への希望に
鹿児島(5位)C 山口卓己ら中軸が抜け戦力半減の危機。村松航太らJ2経験者のリーダーシップに頼る形となり、再建は急務
琉球(16位)A 平松昇の穴を堀内颯人ら経験豊富な選手でカバー。中盤の構成力を維持し、攻守のバランス改善へ一歩前進

 この補強内容からは、J3クラブの「昇格も降格もない百年構想リーグで無理はしたくない」という思惑が見えてくる。今は現有戦力のレベルアップを図りたいという考えなのだろう。

 そしてデータ分析の結果は厳しいものとなったが、悲観する必要はない。J3リーグは「再生と育成」のリーグだ。昨季のデータがない大卒ルーキーが突然得点王争いに絡んだり、怪我で苦しんでいたベテランが復活してチームを牽引したりするケースは枚挙にいとまがない。

 数値上のマイナスを埋めて余りある「新戦力の爆発」がどのチームで起きるのか。そして、唯一戦力キープに成功した昇格組・滋賀が旋風を巻き起こすのか。混沌とした2026シーズンのJ3リーグからも目が離せない。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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