札幌がJ1昇格するには? 記録した「30-39」…岩政監督が指摘する課題「両方ですよね」

札幌を率いる岩政大樹監督【写真:元川悦子】
札幌を率いる岩政大樹監督【写真:元川悦子】

札幌は1年での昇格を目指す

 2025年J2は残り15試合。8月2日のJ2再開直後からJ1昇格レースの佳境に突入する。自動昇格圏にいる2位・ジェフユナイテッド千葉と10ポイント差、プレーオフ圏内の6位・徳島ヴォルティスと7ポイント差にいる11位・北海道コンサドーレ札幌としては、やはり連勝して一気に順位を上げていくしかない。(取材・文=元川悦子/全7回の4回目)

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 岩政大樹監督も「大型連勝の必要性」を繰り返し強調していたが、それは選手たちも共有していること。2日の再開初戦・サガン鳥栖戦が近づくにつれて緊張感は日に日に高まっていると言っていい。

 そこで考えなければならないポイントの1つが、現在の得失点である。札幌の場合、総得点が30・総失点が39で、得失点差はマイナス9。トップ10に入っているチームは全て得失点差がプラスで、このアンバランスな状態を改善しない限り、上位浮上・逆転昇格はあり得ない。

「総得点30、総失点39。(問題は)両方ですし、この状況を望んでいるわけじゃない。僕は失点が少ない方が好きなんで。もっとバランスを取りたいところではあるんですけど、うまく取れないのは今の僕たちの課題の1つだと感じています

 コンサドーレはこれまでも派手な試合が多いチームでしたから、バランスの改善は簡単ではありません。しかし、勝ち続けるためには、そこは時間がかかっても粘り強く修正していくしかない。メンバー編成を含めて、最善策を考えていくべきだと思いますね」と指揮官は神妙な面持ちで言う。

 失点減のカギになると見られるのは、やはり新戦力の宮大樹と浦上仁騎、そしてキャプテンの高嶺朋樹らだろう。実際、宮と浦上が加わってから、7月5日のレノファ山口戦を1-0で完封勝利するなど、少しは成果も出てきている。

 浦上自身は「安定感が出てきたとは感じていないし、失点数自体も減っていないけど、悪い面ばかりに目を向けてしまうと、どうしてもチーム全体がネガティブになってしまう。いいところもあることを共有しながら、課題と真摯に向き合いながら1つ1つ解決していくことが大事だと思っています」と守備リーダーとしてチームをけん引する覚悟だ。岩政監督もかつては屈強なDFだったが、彼や宮、高尾瑠らに細かい部分を伝えていくことで、より強固な守備組織が形成されてくはずだ。

守備だけでなく攻撃も課題か

 そのうえで、得点数も増やす必要がある。今の札幌を見ると、チーム最多得点者は7点のアマドゥ・バカヨコで、それに続くのが4点の高嶺、家泉怜依。日本人アタッカーは青木亮太と近藤友喜の3点が最高ということで、ゴール数が伸び悩んでいるのは事実だ。

 今季攻撃陣の軸となっている青木亮太も自身の数字には満足していない。

「自分はまだまだ得点が少ないですし、もっとフィニッシャーとしての仕事を果たさなければいけない。(流通経済大学付属柏)高校の同期のジャメ君(ジャーメイン良=広島)からはすごく刺激を受けました。ゴール前に入っていかないとなかなか点は取れないし、ゴールの取れる位置というのを彼は知っているなと。自分もそういう動きや入り方をもっと考えないといけないと感じました」と背番号11は静かな闘志を燃やしている。今は7月12日の前節・ジュビロ磐田戦の負傷から回復途上だが、後半戦は重要な得点源の1人になってほしいところだ。

「青木を筆頭に日本人選手たちにはもちろん期待していますし、新戦力のマリオ・セルジオも得点を取る形を持っている。その逆算から彼はプレーしているので、得点力を上げる1つのピースになる可能性を秘めているのは間違いないと思います。

 ただ、僕はいつも選手に言ってますけど、試合に誰が出るか、監督である僕自身も全く分からない。彼らのパフォーマンスで決めていくだけの話なんで、その競争をフェアにさせることが今年の重要テーマ。それが選手たちを成長させると僕は信じています。

 その方針をシーズン最後まで貫くつもりですけど、前半戦のようにいろんな選手にチャンスに与えて、気づかせながら、チームを強くしていくという作業はもうやっているタイミングではない。大型連勝するということが目標の全てになるので、幅広く選手を使うことはできなくなるとは思いますけど、チームを勝たせられる選手を選択することは今後もブレずにやり続けていきます」と岩政監督は高度な競争が大躍進の原動力になるという確固たる信念を持って、突き進む覚悟だ。

昇格PO圏内まで勝ち点差7

 札幌にとって幸いなのは、今季のJ2は”魔境”と言われるほどの大混戦になっていること。首位を走るのが、J1昇格未経験で、J1昇格プレーオフにも参戦したことのない水戸ホーリーホックで、昨季プレーオフ参戦組のV・ファーレン長崎、モンテディオ山形が苦戦を強いられるなど、まだまだ波乱含みの状況が続くのではないか。

「抜けてるチームはないとは思います。勝ち点ペースが低いことも分かっている。このまま混戦のまま進んでいくんじゃないかとは見ています。

 ただ、今の時点で他のチームの結果を見る必要が全くない。自分たちの勝ち点ペースはここまで右肩上がりなので、このままさらに上げていければ自然に順位は上がります。僕たちが目指しているのは昇格ですし、そのターゲットは変わりない。いい形で仕上げの作業に入っていくことだけを考えて、8月以降の戦いに臨んでいきます」

 果たして再開後の札幌は、総得点・総失点のバランスを大きく変えられるのか。奪った得点を手堅く守り切って勝てるような集団へと変貌できるのか。ここからの劇的な変化に期待したいものである。(第5回に続く)

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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