日本代表はなぜ「つまらない」のか 「ファンはそれを見透かしている」――“顔”が見えないチームの停滞と魅力不足

日本代表はベトナム相手に辛勝【写真:©JFA】
日本代表はベトナム相手に辛勝【写真:©JFA】

【識者コラム】「つまらない」原因、考えられることの1つがスターの不在だ

 最近、日本代表の話題になると「森保監督は解任されないのですか?」と、よく聞かれるようになった。解任を心配しているのではなく、まだ解任されないのかという意味だ。

 森保一監督には大変気の毒ではあるが、ファンの中には解任を望んでいる人が一定数いる。もちろん代表監督に批判は付きもので、気にするようなことでもない。それに、かつてのフィリップ・トルシエ監督やバヒド・ハリルホジッチ監督の時のように「解任しろ!」という強硬な感じもあまりない。それでも解任が望まれている理由は、たぶん「つまらない」からだ。

 面白いか、つまらないかは、その人の主観だから、つまらないから解任しろと声高に叫ぶ感じにはなりにくい。その代わり徐々に無関心になっていく。好きの反対は嫌いではなく無関心だというが、日本代表に興味が持たれなくなるというのは、けっこうショッキングな事態かもしれない。

 必死に戦っている選手や監督に向かって「つまらないです」なんて言えないけれども、どうして「つまらない」のかは考えてみたほうがいいような気がした。どうして最近の日本代表戦にワクワクしないのか。

 考えられることの1つがスターの不在だ。

 一時期は「スターシステム」と揶揄されたぐらい、日本のメディアは特定のスター選手を祭り上げる傾向がある。そのほうが一般に広く浸透させやすく、つまり新聞や雑誌が売れるからだ。スターがいたほうが盛り上がる。Jリーグ開幕時はブームも相まって、1994年アメリカ・ワールドカップを目指したチームはとても人気があった。なかでも三浦知良は大スターだった。その後も中田英寿、中村俊輔、本田圭佑、香川真司とスターの系譜は続いていた。

 現在の日本代表にも実力ではスターなはずの選手はいる。冨安健洋や遠藤航はヨーロッパで活躍中、南野拓実の所属クラブはリバプールだ。全体に選手のクオリティーは高くなっているはずである。ただ、チームを牽引するような存在は見当たらない。キャプテンの吉田麻也に存在感はあるけれども、プレーで引っ張れるスターかというと少し違うだろう。

 ヨーロッパの監督はよく「チームがスターだ」と言う。言いたいことは分かるが、スターのいないチームはたいてい面白くはない。特定の選手に依存するということではなく、選手の「顔」が見えないチームには魅力がないのだ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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