「選手と話をするな」 プロフェッショナルレフェリーが明かす“レフェリングの今と昔”

レフェリーの家本政明氏(写真は2012年のもの)【写真:Getty Images】
レフェリーの家本政明氏(写真は2012年のもの)【写真:Getty Images】

プロフェッショナルレフェリー・家本主審が試合上の「コミュニケーション」について言及

 日本サッカー協会(JFA)は、パーソルグループと共同製作したインタビュー動画「サッカー審判員としてはたらく」をパーソルグループのYouTubeチャンネルで公開。プロフェッショナルレフェリーである家本政明主審は、試合を運営していくうえでの「コミュニケーション」の部分についての秘話を明かしている。

 JFAとパーソルグループが共同製作したインタビュー動画は6本公開され、審判員の「複業」の苦労や、女性審判員として働くことについてなど、各テーマに沿ってさまざまな審判員が登場。人と組織に関わる多様なサービスを提供するパーソルグループの視点で掘り下げた内容となっている。

 Jリーグだけでなく過去には国際審判員として海外の試合も裁いた経験豊富な家本主審は、「ジャッジメントの舞台裏~前編~対等に渡り合う“言葉”(コミュニケーション)とは」というテーマで登場。ベテランならではの視点で、レフェリングの今と昔の変化についても言及している。

「僕が国際(審判員)になる前後の頃は『あまり選手と話をするな』とか『笑うな』とか、そういうのは結構、方針・方向性としてあって、自分の中でなんでそんなに敵対するのかなと思いながら……。でもそういうことを求められるからそういうふうにするわけじゃないですか。でもそうすると、当然上手くいくわけない。そういうのが正直ありました」

 現在でこそ、主審と選手が会話をしてコミュニケーションを取る場面は多数見られるが、家本主審が語る2005年前後の時代では、審判が目指す方針がそもそも今とはだいぶ異なっていたようだ。そうした時期を乗り越え、審判も成長してきたと家本主審は明かす。

「笛を吹いて悪さを摘発するような役割ではなくて、一緒にフットボールを作るとか夢を実現するために協働するとか、喜んでほしいお客さんと一緒に感動を創り上げるだとか……。そのためにはしっかり選手と向き合う必要があるし、お客さんと向き合う必要があるしというようなことを価値観として、我々日本の中に欠けていたものを注入してくれるような機会だとか人がたくさんおられて……。

それで我々はたくさん学んだりとか、やっぱそうだよねという話をたくさんしたりとか。その中で切磋琢磨してうち(レフェリー)もそうですし、選手やチームやメディア、いろいろな方と切磋琢磨しながら変わってきているというところはありますね」

 また家本主審は、選手とコミュニケーションを取るうえで「万人に1つの方法では上手くいかない」と選手やチームの状態を観察し、様々なアプローチをしていると明かす。

「人(他の選手)を介すとか、あるいは今じゃなくてちょっとあえてタイミングをずらして、少し冷静なタイミングを見計らって『さっきのあれだけどさ……』というとか。場を整えることによって、安心感が生まれたり、信頼感が生まれたりとかはあるじゃないですか。どういうふうにしてより分かりやすく伝えられるかなということは考えています」

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