横浜FMが川崎を“急追”、直近3戦14得点の破壊力 躍進導く桁違いのスピード&運動量

直近3試合で14得点と好調な横浜F・マリノス【写真:Getty Images】
直近3試合で14得点と好調な横浜F・マリノス【写真:Getty Images】

【識者コラム】マスカット監督の就任後に5勝1分、苦境でも違いを作る決定力

 川崎フロンターレが記録破りの強さで独走態勢を築きかけた今年のJ1リーグだが、早くも第26節で横浜F・マリノスがピタリと背中につけてしまった。川崎のペースが極端に落ちたわけではなく、26戦目のアビスパ福岡戦(0-1)が今季初黒星だったから、横浜FMがそれを上回るハイペースで急追したことになる。

 特に現在の攻撃的スタイルを定着させたアンジェ・ポステコグルー監督が去った影響が懸念材料だったのに、ケヴィン・マスカット監督が引き継いでからは5勝1分。直近の3試合が14得点1失点と弾みをつけた。

 とりわけ対戦時点で3位につけていたサガン鳥栖戦(第26節/4-0)は重要な意味を持ち、前半は相手の果敢なプレッシングに苦しんだ。ポゼッションはやや横浜FM優勢だったが、開始3分には小屋松知哉が決定機を迎えるなど、前半20分までには鳥栖側がフリーでフィニッシュを迎える形を3度作った。実際、守備の要として定着している畠中慎之輔も「マンツーマンのプレスのかわし方はトレーニングでやっているのだが、相手のプレッシャーを受けてしまい、出方を窺いながらかわしてパスを出すという形ができなかった」と振り返っている。

 だが苦境でも違いを作ったのは決定力だった。前半41分には、GK高丘陽平から始まるシンプルな攻撃で、レオ・セアラがフリーで飛び出す前田大然に繋げて先制。そして後半開始早々には敵陣のスローインから、扇原貴宏がディフェンスラインの背後に送ると、前田が先に落下点に入った鳥栖のアンカー、樋口雄太を追い越したところで後ろから倒される。横浜FMはPKで追加点を奪うとともに、鳥栖の樋口が退場になり、試合は一気に傾いた。

 しかも横浜FMは5人交代枠をフル活用し、前線4人(レオ・セアラ、エウベル、前田、マルコス・ジュニオール)とボランチの喜田拓也までを総入れ替えし、さらに2ゴールを追加している。後からピッチに立ったのが、一昨年優勝時のMVP仲川輝人や天野純、水沼宏太、小池龍太、渡辺皓太なので、キャスティングが変化しただけで質が低下した感はまったくない。むしろフレッシュな特長が引き立つほどだから、こうして酷暑の連戦を文字通りの総力戦で挑めているのは大きな利点になっている。

 第24節で横浜FMに1-5で敗れた大分トリニータの片野坂知宏監督は語った。

「マリノスは走りながら止まらずにプレーしていて、攻撃のオーガナイズも整理されている。自陣でブロックを作る手もあったが、構えていても剥がす術を持っているので、サンドバック状態で守備に疲弊してしまう」

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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