葛藤、そして決断 鄭大世を現役続行に導いたモノ「泥水をすすってでも続けたい」

町田に移籍して期待がかかる元北朝鮮代表FW鄭大世【写真:©FCMZ】
町田に移籍して期待がかかる元北朝鮮代表FW鄭大世【写真:©FCMZ】

【鄭大世インタビュー|Vol.3】内田や中村から受けた「体が動くなら続けるべき」の助言

 Jリーグ通算100ゴールを誇る元北朝鮮代表FW鄭大世は、2021年シーズンからJ2のFC町田ゼルビアに加入した。現役続行か、引退して一家の大黒柱として家族を養う役割を全うすべきか、葛藤したなかで、最後は「泥水をすすってでも現役を続けたい」という気持ちが勝った。今年3月で37歳。それでも、その心は新天地での挑戦を前に熱く燃えたぎっている。(取材・文=Football ZONE web編集部・小田智史)

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「家族との相談のうえ、引退を決意しました」

 鄭大世は今年1月5日に町田加入が決まった際、リリース内で一度は現役を引退する覚悟だったことを明かしている。清水エスパルスを契約満了になったとはいえ、昨季シーズン途中に期限付き移籍したアルビレックス新潟でJ2リーグ戦26試合9得点と結果を残したにもかかわらず、なぜ「引退」の2文字が頭をよぎったのか。

「今年の(移籍)ウインドーは、非常に厳しかったです。オファーはいただいたのですが、家族とは最後に花を咲かせられて『鄭大世』というブランドをある程度残せたと思うし、ここで幕を引くのがいいんじゃないかという話にもなりました。僕も家族がいて、サッカーを続けるためには自分のことだけでなく、様々なことを考える必要がありました。その悩んでいたタイミングで、町田がオファーしてくれた流れです」

 去就を決めるにあたっては、昨年に現役を引退した元日本代表MF中村憲剛氏、同DF内田篤人氏らに相談した。全員の回答が揃って、「体が動くなら続けるべき」。鄭大世も「実は、僕も心の中ではそう思っていました」と振り返る。

「ウッチー(内田)は『必要とされているなら絶対にやったほうがいい』と。憲剛さんからは、『辞めるのもいいけど、やると決めたんだったら、オファーをくれた相手に対して全力で貢献しないといけない。中途半端な気持ちで行くんだったら辞めたほうがいい』と言われました。憲剛さんは完璧な人生で、アップルの株価チャートみたいにずっと右肩上がり。40歳でぴたっと辞めて、もう漫画の世界ですよね。(20年12月の)憲剛さんの引退セレモニーに出席した時、まだ自分の去就が決まっていなかったので、人の引退をどうこう言っている場合じゃないなと思っていました」

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