長谷部誠は“不死鳥”か 今季初めてボランチで先発、チームの頭脳として冴え渡る戦術眼

ボランチとして今季初先発したフランクフルトMF長谷部【写真:Getty Images】
ボランチとして今季初先発したフランクフルトMF長谷部【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】レバークーゼン戦でボランチとして今季初先発、冴え渡った攻撃のタクトさばき

 大袈裟でもなんでもなく、長谷部誠は不死鳥なのか。

 もうすぐ37歳になるというカレンダー上の数字が、まるで信憑性を持たない。年を取ると瞬間的なスピードが衰える、一瞬のキレが失われる、激しい動きの連続についていけないという世間一般の定説すべてを覆しているように感じる。

 ブンデスリーガ第14節レバークーゼン戦(2-1)では、今季初めてボランチとしてスタメン出場。前節バイエルン・ミュンヘンに敗れるまでリーグ無敗だった相手だけに、イエローカードの累積で出場停止となったセバスティアン・ローデの代役候補には守備的なシュテファン・イルザンカーが濃厚と予想されていた。だが、監督のアディ・ヒュッターは、それまでの2試合で確かな手応えをつかんでいたようだ。

 長谷部を起用し、その強みを最大限生かすためには、チームが確かに機能していることが非常に重要だ。センターにマルティン・ヒンターエッガー、その両脇にエヴァン・ヌディカとダビド・アブラハムで形成される3バックはそれぞれスピードがあり、1対1に強く、空中戦で主導権を握ることができる。ただビルドアップ能力はとなると、長谷部がいる時と比べてどうしても落ちてしまう。

 ではアンカーで長谷部を起用すれば、それで問題が解決かというと、そういうわけにもいかない。長谷部の周りで衛星的に走り回りながら、攻守にスペースを埋め続ける動きができる選手が必要不可欠。ヒュッターはこの役割を、ジブリル・ソウに託した。そしてソウは途切れることのない動きの連続で、1試合を通して攻守をつなぎ合わせていく。

 加えて前線からの守備が、しっかりと機能していることが大きな意味を持つ。直近2試合で1トップのアンドレ・シルバ+2トップ下システムは、チームに新しい力をもたらした。レバークーゼン戦ではシルバが後ろからのボールを懐に収め、そのそばでは卓越したキープ力と細かいステップでのドリブル能力が高いアミン・ユネスとパスを引き出し、攻撃にアクセントと変化を加える鎌田大地が常に流動的にサポートしていく。今季新加入の元ドイツ代表FWユネスはようやくコンディションも上がり、鎌田やシルバと息の合ったプレーを見せている。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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