自粛=活動休止なのか? コロナで向き合う“子どもとサッカーのあり方”、街クラブ創設者の提言

Football ZONE webのインタビューに応じた中田一三氏【写真:Football ZONE web】
Football ZONE webのインタビューに応じた中田一三氏【写真:Football ZONE web】

【ZONE語らい居酒屋|第1回】中田一三 FC.ISE-SHIMAの創設者はコロナの猛威とどのように向き合ったのか?

 サッカー界に身を置く有識者は、昨今のサッカー界に対してどのような思いを抱いているのだろうか――。Football ZONE webでは、サッカー人から本音を聞き出す連載「ZONE語らい居酒屋」をスタート。記念すべき第1回のゲストには、現役時代にJリーグの横浜フリューゲルス(当時)やジェフユナイテッド市原(現・千葉)などで活躍し、昨季はJ2京都サンガF.C.で監督を務めた中田一三氏を招いた。現在は自身が創設した三重県を本拠地とするFC.ISE-SHIMAで活動しているが、新型コロナウイルス感染拡大により街クラブが受けた影響や向き合い方について語っている。

 昨季に京都を指揮した中田氏は、マンチェスター・シティをロールモデルとする華麗なポゼッションサッカーを導入し、一昨年19位だったチームを一時は首位にまで浮上させた。最終的には8位でシーズンを終え、契約満了により退任している。その後は、2013年に自身が創設したFC.ISE-SHIMAで現場のマネジメントを務めていたが、そんななかで迎えたのが新型コロナウイルスの猛威だった。

「自分の会社もそうですけど、この4、5月で収益が50%減という現実がある。自分たちも被害というか、影響を受けている立場にある」としつつも、「クラブとして正しく恐れると言いますか、実態が分からないなかで、すべて自粛で止まってしまうというのは、情報過多で情報不足と言いますか、正しい対策ではないなというのは思うところがあった」と、過剰な自粛により正しい情報を見失う危機感を明かした。

「まずは、クラブのアカデミーの子どもたちを守ることから最初にやるべきだと考えた。そして守るためには、活動を継続することだ、と。もちろん、完全にリスクを下げに下げたなかで活動を続け、徹底した対策をするというのが前提。これまでも、ウイルスという面でインフルエンザも同じなので、突然このリスクが現れたわけではない。おそらく、これからもずっと付き合っていくしかない。そのなかで、自粛という形ですべてを止めてしまうというのは、子どもたちにとって適切な対応にはならない危機感があった。一番恐れていたのは、自粛によって適切な情報が行き届かないことだった。個々に自分で責任を明確にして外に出てきているので、同時に対策意識も向上する。ステイホームだけではその意識は身につかない。我々はこれまで通り会員を守りながら、成長してもらうサポートをするべきだと考えた」

 2週間はトップチームと同様、アカデミースクールも完全に活動を休止した時期もあったが、「ある子どもの親に言われたのは、親が仕事に出ているなかで子どもが家にいて、全く管理することができない時間が多くて、気がついたら子どもたちだけでカラオケやゲームセンターに行ってしまっていたこともあると耳にしたので、それだったらクラブの活動という形で我々にできることをやるのが必要だなと感じた」と語った。もともと導入していた管理アプリをさらに活用し、「自律」も促した。それによって「うちのクラブでは、このコロナの一件で子どもたちの成長を感じていて、自己管理力は向上した」と振り返っている。実際のデータとして2月の平均就寝時間が22時50分であったのが、5月は22時になっている。

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