佐藤寿人、“10年に1本”のループボレー弾 瞬時の閃きを生んだ1993年カズの一撃の記憶

広島時代にゴールを量産した佐藤寿人【写真:Getty Images】
広島時代にゴールを量産した佐藤寿人【写真:Getty Images】

【J番記者が選ぶスーパーゴール|広島編】2013年J1第27節鳥栖戦(前半23分)…佐藤寿人の芸術的なループボレー弾

 佐藤寿人という名人は、記憶力が抜群にいい。

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「2012年のFC東京戦のゴールは」と聞けば、「雨の中でミカ(ミキッチ)のクロスを決めたゴールですね」と即答し、詳細まで説明してくれる。しかもその記憶力は、自分自身のゴールについてだけではない。

 たとえば2013年9月28日、アウェーの第27節鳥栖戦(2-0)で驚愕と言っていいループボレーを決めた時のことだ。

 前半23分、右サイドに流れたMF髙萩洋次郎から40メートルを超えるロング・サイドチェンジが寿人の走る場所にピタリと落ちる。その時、誰もが考えた。ここでキープか、それともボールを前に運ぶか。

 しかし、ストライカーの判断はまったく違った。

 2バウンド目の落ち際を走りながらハードヒット。ボールはGK林彰洋の手が届かない空間を通りながらストーンと落下し、逆サイドのネットに放物線を描いて吸い込まれた。20世紀後半、プロ野球で3年連続MVPという快挙を演じた伝説のアンダーハンド、山田久志の魔球・シンカーの如し。鳥栖のホームであるベストアメニティスタジアム(現・駅前不動産スタジアム)は、重力を自在に操ったかのようなシュートに戦慄した。

「イメージどおりのパスだったし、寿人さんとのタイミングも合っていた。でも、あまりにシュートがすご過ぎて、僕のパスはなかったことに」と髙萩は笑った。

 ゴールの起点となるインターセプトを決めたDF千葉和彦は、「10年に1本、あるかないかのゴール。ただ、今年は寿人さん、川崎フロンターレ戦でもすごいループを決めていますから」とエースへの絶対的信頼を口にした。鳥栖の尹晶煥監督も「ああいうシュートを撃たれると、なかなか防ぎようがない。佐藤寿人の決定力が秀でていた」と脱帽せざるを得なかった。

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