スペインを襲う空前の“新型コロナ危機” 久保建英の「不透明な未来」を現地記者が考察

マジョルカの久保建英【写真:Getty Images】
マジョルカの久保建英【写真:Getty Images】

【スペイン発コラム】マジョルカ在住の日本人記者が見た“非日常” 「街全体が止まっている」

 それは異様な光景だった。

 3月13日、新型コロナウイルスの感染拡大防止策としてスペインで非常事態宣言が出て以来、住民は事実上外出ができない状態になっている。家の窓から見える範囲で人や物が動いている様子はなく、子供たちの歓声や雑踏は消え、聞こえるのは鳥のさえずりぐらい。街全体が止まっているのだ。

 数少ない外出理由である生活必需品の買い出しに出ても、その違和感は払拭されるどころか確信に変わる。歩いているのは犬の散歩に出ている人だけで、行き交う車も非常にまばらだ。

 約10日が経過した現在、いくらか状況は落ち着きを見せているとはいえ、行き交う人たちは手袋やマスクを着け、用事だけを済ませ足早に去って行く。道端で顔なじみと出会っても立ち話をするのがはばかられるような雰囲気……。これまで一度もマスクや手袋をしている人を見かけたことがなく、いつもなら挨拶に抱擁し、聞いてもいない予定まで自分から言ってしまうスペイン人の日常から考えると、真逆に針が触れてしまったほどの変化と言える。

 いくつかの意味で史上初めての事態となるなか、サッカー界でも今後受けるであろう影響が、おぼろげながら見え始めている。

 まずはリーガ・エスパニョーラが、いつ再開するかという点だ。複数の報道によると、リーガは早ければ4月半ば、遅くとも5月中と複数の時期を睨みながら調整が続いている。一時語られていた現時点での閉幕は、現状で選択肢にないと考えられる。

 続いて経済的損失。様々な形でかなりの数字が出てくるだろうが、「ムンド・デポルティーボ」紙によるとバルセロナは予定されていた収入が見込めないことから、選手に給与のダウン提示をすべく下調整をしているという。今後他クラブを含めた話し合いで、この流れの大勢が決まると考えられる。

 当然のことながら、選手のコンディションにも悪影響が出る。すべてのクラブがチーム練習を止め、選手それぞれが自宅でトレーニングをしている状況だが、その代償は少なからずある。前アーセナル監督のウナイ・エメリ氏は「マルカ」紙に対し、「再開する前に全チームに7〜14日の準備期間が与えられるのが妥当ではないか」との見解を示している。

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島田 徹

1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。

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