Jリーグ「トップクラス」の守護神は? ドイツの日本人GKコーチ、昨季J1の”全失点”分析

(左から)林(FC東京)、西川(浦和)、ランゲラック(名古屋)、朴(横浜FM)、東口(G大阪)【写真:Getty Images&高橋学&木鋪虎雄&Noriko NAGANO】
(左から)林(FC東京)、西川(浦和)、ランゲラック(名古屋)、朴(横浜FM)、東口(G大阪)【写真:Getty Images&高橋学&木鋪虎雄&Noriko NAGANO】

シュツットガルト下部組織でGKコーチを務める松岡氏 J1に出場した守護神33人のプレーを分析

 ドイツの名門シュツットガルトのU-14、15チームでGKコーチを務める松岡裕三郎氏が、2019シーズンのJ1リーグで生まれた全失点を分析した。

 前回はその結果を、2018-19シーズンのブンデスリーガと比較したが、今回は選手個別のパフォーマンスにスポットを当ててもらい、GKコーチの視点からポジティブに映った選手、課題が多く見られた選手などについて語ってもらった。

“Jリーグ王者”横浜FM守護神のパフォーマンスは?

 2019シーズンのJ1リーグでは、全34節(306試合)で797ゴールが生まれました。これらの失点について分析すると、以下のように分類することができます。

【2019年のJ1全失点を“GK視点”で分類】
[1]GKが失点に関与しない、防げない失点:326ゴール(40.9%)
[2]GKが防ぐことができる、改善できる失点:365ゴール(45.8%)
[3]GKのミスによる失点:106ゴール(13.3%)

 前回の記事ではブンデスリーガとの比較を行いましたが、この結果からJ1ではGKの技術的なミス、防ぐべきだった失点が非常に多い事実が分かりました。その分析結果を踏まえて、選手別に何人かを見ていこうと思います。2019シーズンのJ1でプレーしたGKは、全18クラブで合計33選手に及びました。

 15年ぶりにJ1リーグで優勝した横浜F・マリノスは、攻撃的スタイルでリーグ最多の総得点「68」と圧倒した一方、総失点も「38」ありました。これは現行の18チーム制となった2005年以降のJ1優勝チームとしては、05年のガンバ大阪(58失点)、11年の柏レイソル(42失点)に次ぐ多さでした。

 そのチームにおいて第5節以降に正GKとなった朴一圭選手は、25試合で24失点。そのうち前述した分類[1]の「GKが失点に関与しない、防げない失点」は8ゴール(33.33%)、同[2]の「GKが防ぐことができる、改善できる失点」が10ゴール(41.67%)、同[3]の「GKのミスによる失点」が6ゴール(25%)でした。優勝に貢献した1人であることは間違いないのですが、「防ぐことができる、改善できる失点」と「ミスによる失点」の計16ゴールは、十分に減らすことができるものでした。

 この16失点の原因(1失点に一つ以上の原因がある)で最も多かったものは「GKテクニック(※注1)」で11失点、次に「戦術的ポジショニング(※注2)」が10失点、「判断(※注3)」が6失点、「ぶれない、先に倒れない(※注4)」が5失点でした。GKテクニックの強化、ゴールディフェンスから1対1への判断の切り替えを改善すれば、より失点を減らすことができたはずです。

 横浜FMは非常に攻撃的なスタイルのチームで、最終ラインの背後をケアする守備範囲の広さが求められるなか、朴選手はそうしたタスクを実行できていました。実際、朴選手のスペースディフェンスでの失点は1点のみ。改善点を強化できれば、さらにチームの勝ち点獲得に貢献することができるでしょう。

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