「パス」に込められたメッセージ ブラジル戦データに見る日本代表の狙いと現在地

【サッカー「データ論」|第1回 パス】1試合で最も多いプレーに表れるスタイルの違い

 現地時間12月1日(日本時間2日午前0時)、ロシア・ワールドカップ(W杯)の組み合わせ抽選会が行われる。思い起こせば2014年ブラジルW杯では日本代表の不甲斐なさと対照的に、優勝したドイツ代表の強さが印象的だった。その陰の立役者となったのが、テクノロジーだ。これまで人間の目視で取得可能な1試合の全プレー数は2000~2500。しかし最新のトラッキングシステムで取得するデータの数は4000万とも言われている。それだけのプレー数をリアルタイムで解析可能なテクノロジーと、それを活用する人の英知がドイツ代表の強さの一つだったというわけだ。

 現在の日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督の言葉の中にも、データは多く潜んでいる。デュエル、インテンシティー、ポゼッション率、体脂肪率……数値に置き換えられるサッカー用語が、頻繁に聞かれるようになってきた。サッカーとデータ、その定義と意味合いについて解説していきたい。

 サッカーのデータを作成する時に、取得する主なデータにはシュートやドリブル、パス、クリアなど様々な項目がある。これらをいつ、誰が、どこで行ったのかを記録するだけで前述のように2000~2500のプレー数が取得できる。そしてそれらのプレーは成功したのか失敗したのか。どういう局面で誰は成功することが多く、誰はそうでないのか。2000強のデータであっても分析のテーマによって、その抽出の仕方、組み合わせの仕方は無限大だ。

 これらのデータの中で最も多く行われるプレーはパスだ。サッカーは縦105m×横68mのピッチの中で、相手より1点でも多く取ったチームが勝ちとなる競技だ。得点を取るためには相手ゴールにボールを蹴りこむことになるわけだが、相手ゴールには手を使うことが唯一許されたGKが立ちはだかり、相手DFもその周辺を必死で守る。その状況で得点を奪うためには、いかに相手ゴールに近いところで、相手選手の対応が困難な状況を作り上げてシュートするかが求められる。

 よく言われることだが、ボールが疲れることはない。さらに人の移動スピードよりも速い。従って相手のゴール前に効率良く運ぶためには、パスというプレーはとても有効だ。時折アクセントにドリブルを交えながらもパスというプレーを選択することは、必然的に増えてくる。そんな最も多く使われるパスというプレーのデータを考えてみたいと思う。

 

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