W杯まで残り8カ月ですべきこと データで見るハリルJ「カメレオン戦術」の可能性

「攻めのカメレオン」で効率性を追求すれば…

 一時代を築いたスペイン代表やバルセロナに代表されるポゼッションスタイルも、相手からボールを奪ってシュートするまでの時間は想像以上に短い。

 ボールをつないで時間をかけてシュートを打つというのは、世界トップレベルでも容易なことではない。つなぎながらゴールに近づけば近づくほど、相手の守備網は固く、当然奪われるケースも多くなる。つなぐために重要なことは、パスの受け手の人数と位置、そしてその距離感だ。それが高いレベルで行われていれば、奪われた後、奪い返す確率が高まる。そこからのショートカウンターが、ポゼッションスタイルの生命線だ。

 一方、それに対抗する形で14年W杯で主流だったカウンターアタックは、高い技術で中盤から回されることによって余計に体力を消耗したり、広大なスペースを与えないために、奪いどころを自陣低い位置に構え、奪った後、相手のプレスの網をかいくぐって早くシンプルに相手ゴール前にボールを運ぶスタイルだ。スタイルは異なっても、相手ゴール前に早くボールを運ぶことが得点の機会を増やすという原理原則は変わらない。

 そういう意味で、ハリルジャパンの戦術はシンプルだ。問題はこのスタイルが、世界のどのレベルの相手にまで通用するのかという見極めと、その戦術を実践するためにどの選手を選ぶべきかという選手選考だ。

 これまでの選手選考において「欧州組が多い」と言われるのには、やはり理由があるのだろう。相手ゴール前に効率良くボールを運ぶサッカーに慣れているかどうか、そしてそれを阻止するための戦術に慣れているかどうか――そうしたスタイルに日常的に触れているかが、とても重要だと感じる。

 ロシアW杯に向かう現在の日本代表の戦い方や選手選考、監督の能力には様々な見方があるだろう。しかし、データで見る限り、現在の日本代表の方向性は「効率性」「確率を高める」ということを徹底しているように見える。「方向性が常に変わってしまう」という意味で「カメレオン戦術」という言葉が使われているのであれば問題だが、世界の様々なスタイルを持つ相手に対して、ハリルジャパンが目指す「効率性」「確率を高める」という方向性を実践するために様々な人選やシステム、スタイルを駆使するのであれば、筋が通っている。ロシアW杯まで残り約8カ月となった今、大事なことは誰を起用した時に、どのレベルの相手に通用するのかという、チーム力の見極めだろう。

 相手を怖がりながら周りの色に同化し、近くに来た獲物を得る「守りのカメレオン」ではなく、自らが望む獲物を手にするために必要であれば柔軟に色を変える「攻めのカメレオン」であれば、日本がロシアW杯の一つのトレンドになる可能性は十分にある。

analyzed by ZONE Analyzing Team

データ提供元:Instat

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

田口有史 ●写真 photo by Yukihito Taguchi

 

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング