日本代表が世界で勝つために、胸に刻むべき「ゆでガエル」の教訓

 

データを見る限り大きな問題は見えてこないが……

 

「ゆでガエル」の話をご存じだろうか。ビジネス等で現状の環境に甘えることに対する注意喚起の際に使われることの多い警句だ。

 2匹のカエルを別々の入れ物に入れる。一方は熱湯、もう一方は常温の水が入っている。熱湯に入れられたカエルは熱さを感じて一瞬にしてその入れ物から飛び出る。常温の水の中にいるカエルはそのまま水の中にいる。その水を徐々に熱していく。カエルは熱が上がる度に少しずつ適応し生き続けるが、ある温度に達すると熱さのため死んでしまう。つまりぬるい環境に慣れてしまうと、ある危機的な状況が訪れた時に対応できずに致命的な状態に陥ってしまうことを戒めたたとえ話だ。

「自分たちのやり方は間違っていない。これまで成功してきたのだから継続していく。今モデルチェンジ(改革)するのはむしろ危険だ」。ビジネスの現場でも良く聞こえてくるゆでガエルの代表的な意見だ。

 さて、話をアジアカップに移そう。

 アジアカップの最大の敵はどこだろうか。「Who?」と聞かれればおそらく韓国、オーストラリア、もしかしたらイランと答えるかもしれない。それは正しい。それではアジアカップ最大の敵は何だろう。「What?」と聞かれた場合の答えは、移動距離、時差、アウェイの環境、気候などだろう。だが今回、このディスアドバンテージによって最も苦しめられているのは長距離移動を伴う中東の国々だ。オーストラリアはもちろん、日本、韓国、中国は時差という面において比較的負担が少ない。そのことを念頭において、試合を分析してみたい。

 直近のヨルダンとの試合はアウェイで戦った2013年のワールドカップアジア最終予選だ。そこで日本は1-2で敗れたために、ヨルダンについては必要以上に強豪国というイメージで紹介されているが、2012年のホーム戦では6-0で下している相手だ。これだけ見ても地の利は大きく作用していたのが分かる。

 先の「ゆでガエル」の例を使うとすれば、パレスチナ、イラク、ヨルダンとの試合は常温水だ。ここで適応してしまえば、必ずオーストラリア、韓国との試合で躓き、ワールドカップという熱湯であっという間に死を迎える。常温水の中で何を考え、どのような問題意識でプレーしていくべきか考えていきたい。

図1

 日本対ヨルダン戦の表を見てほしい。前半の日本のポゼッション率は74.4%、つまり試合時間の3/4を支配していたことになる。試合を通したアクチュアルタイム(リスタート等を除いた実質試合時間)はアジアでの大会は50分前後のため、前半だけ見ると25分の3/4、つまり約19分は日本のボールだ。相手ボールの時の約6分間だけ相手のイニシアチブで進められるが、パスの成功率60%強という技術の低いチーム相手の守備はさほど負担にならない。逆に相手は移動を伴い時差に悩む上に前半からこれだけの負荷をかけられたため、それを後半跳ね返すにはかなりの力が必要な状況だった。

 日本が打たれたシュートわずか4本。うち枠に飛んだのは1本だけだ。我々が常に指摘し続けてきたDuels(50%対50%の状況下でどちらがボールを奪ったかを示すデータ)の勝率の低さも、初戦(49.1%)、2戦目(37.7%)から大幅に改善され、57.1%となった。この試合でDuelsの勝率を上げるのに貢献していたのは酒井高徳(100%)、吉田麻也(80%)、本田(77%)、森重(75%)、長谷部(70%)だ。もうワンランクアップするためには香川(37.5%)、岡崎(37.6%)、長友(46.2%)らの中心選手がコンスタントに50%を超えるプレーをする必要がある。

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