【W杯詳細分析・ドイツ-ブラジル】王国ブラジルに何が起きたのか? 1-7の悲劇的な大敗で浮き彫りになるドイツの完成度の高さ 

後手を踏んだブラジルの守備陣

 次に、ドイツの流動性ある攻撃に対して劣る運動量の結果何が起きたか見てみたい。

 マッチング

  このイラストは上がスタート時のフォーメーション、下がこの試合の先発メンバーの平均ポジションだ。ドイツは右サイドバックのDFフィリップ・ラームが攻撃参加するために高い位置にいる。ミュラーとMFメスト・エジルが内側にいるのは前線での積極的なポジションチェンジの結果だ。このフォーメーションのマッチングではドイツの3トップに対し、ブラジルは4バックでの対応が基本となるはずだ。だが、両サイドバック同士がマッチングする機会が多くなり、必然とエジルとミュラーのマークが浮く結果に。ミュラーにはダンテが対応していることになるが、エジルは恒常的にフリーな状態になっている。そうして次から次へと「ずれ」が生じた結果、ブラジルは自陣に湧き出てくるドイツの選手への対応が追い付かなくなってしまったというわけだ。

 ブラジルは最終ラインの統率者が累積カードで欠場を余儀なくされ、前線で相手の脅威となっていたエースを欠いた。実はデータには現れない選手の「名前」というのは試合運びの上で非常に大きな要因となりうる。それは日本代表がドログバや、ハメスの登場によってプレーバランスを大きく崩したのを見れば分かるはずだ。ブラジルが攻守における2枚看板を欠いたのは不幸な側面もあるが、W杯が総力戦であることを考えれば、それを大敗の要因にはし難い。しかし、その2人の欠場がかすむほど、内容そのものに明確な優劣がついてしまったのだ。

 このドイツをどの国が打ち破ることができるのか? 現時点では想像できないくらいその戦い方は成熟している。これから始まるアルゼンチンと、オランダの勝者と戦うわけだが、この2カ国よりも1日長い休養期間があり、準決勝ではけがのリスクまで考えた上で選手交代も行っている。そうした決勝に向けて万全のマネジメントができているドイツに一日の長があるような気がしてならない。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team
データ提供元:opta/fifa.com

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

※ワールドカップ期間中、記事内で扱うシーンの一部はFIFAワールドカップ公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』のマルチアングル動画、選手毎のスタッツデータで確認できます。
詳しくは、「LEGENDS STADIUM 2014 – FIFAワールドカップ公式動画」まで

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