【W杯詳細分析・日本-ギリシャ】パス成功率90%、ポゼッション率70%――データ上はこれ以上ない「自分たちのサッカー」 日本に足りなかったのは「勇気」と「選択肢」

 この日の先発はコートジボワール戦と変わったところでは、森重に代わって今野が入り、香川ではなく大久保が右サイドで先発を務めていた。先発メンバー変更の意図、また、アディッショナルタイムも含めると約60分もの間、相手が1人少ない状況にも関わらずスコアレスドローという結果になってしまった理由をデータから紐解いてみたい。

 ギリシャは初戦のコロンビア戦で攻撃を仕掛けるアタッキングサードでのプレーの49.1%が右サイドだった。右サイドのトロシディスサルピンギディスの攻撃参加はギリシャの数少ない攻撃のストロングポイントだ。

 日本にとってコートジボワール戦の2失点がいずれも自分たちの左サイドを起点とされた以上、その問題解決は最優先事項だ。結果、カバー能力に優れザックジャパンで長友の攻撃参加を陰で支え続けてきた今野を戻し、守備に問題があった香川を思い切ってベンチに。そして、守備の出来る岡崎を配置した。その意図は理解できる。

 またこの日の日本は「自分たちのサッカー」が出来なかった初戦の反省から、徹底してポゼッションを高めていった。ほとんどの時間、70%前後のポゼッション率を維持していた。ギリシャのパス177本、パス成功率65%と比較して、553本のパスを89.5%の精度で回し、18本のシュートを放った。このデータだけを見れば、欧州の強豪チームに4年間の集大成を見せつけたことになる。

 前半38分という早い時間に相手の中盤の核カツラニスが2枚目のカードで退場すると日本の勢いはさらに増す。しかしEURO2004優勝メンバーの退場がこの日の勝負を分けることになった。

 サッカーの試合で退場して数的不利で試合を行うことはそれほど珍しいことではない。しかしギリシャにとって、この大舞台で前半から10人で戦わなければならないという事態は想定外だったはずだ。35分にはすでにチームの得点源ミトログルを怪我で交代させ、カツラニスの退場を受け、フェトファツィディスの代わりに37歳のベテラン、カラグニスを投入。前半だけで2枚のカード切ることになった。

 ここでギリシャが開き直った。コロンビア戦で想定外の早い時間の失点に対して自分たちのスタイルを忘れて攻めに行ったのとは逆に10人で守り切り、チャンスがあればカウンターで得点を狙うという本来の形を徹底することになった。そのために切ったカードは運動量豊富な若手ではなく、ギリシャのサッカーそのものを熟知している大ベテランだった。

「日本はパスを回して相手を揺さぶっていますから人数の少ない相手はフラフラですよ。得点は時間の問題ですよ」

 テレビのコメンテーターがそんな言葉を発していたが、残念ながらギリシャは得点するためのカウンターを何回も行う体力は持ち合わせていなかったが、それを多少犠牲にしても守り切るだけの強さと体力は十分に持っていた。

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